生まれた日のこと:中編

ついにを出産当日を迎えました。

出産に立ち会ったり、ビデオを撮ったりする方も多いですが、僕の場合は出産が手術だったため、入室することはできないと言われていました。妊娠が分かったころから立ち会いたいという気持ちはありましたが、それはあきらめて病院の方々にお任せすることにしました。仮に入れたとしても気絶したりして邪魔になったかもしれないのですが。

 

その日は10時半くらいから手術をするため、朝一番で病院に入りました。事前にいくつか注意事項を伺っていましたが、当日まで忘れていたことがありました。

結婚指輪を外すことです。

最近は外科手術で切開する際電気メスを使うため事前に指輪などの装飾品は外しておくものですが、妊娠中奥様の手はかなりむくんでいたため「今度外そうね」と言って当日まで外していませんでした。(どちらかというと忘れていました)

 

当然、手術直前でも外すことができません。どうしても外せなかったので看護師さんに相談したら、迎えに来てくださったお医者様が「これを指輪と指の間に挟んで下さい」と言ってラテックスの手袋を渡してくれました。

ああなるほど、これで絶縁するのか、と感心しながら指の部分を輪切りにして指と指輪の間に挟み込み、念のため指輪をゴムで包み込んでおきました。

 

それから奥様は分娩室に入り、僕はその前で待っていました。椅子もありましたが、二人が無事に出てくるまで立って待っていようと「手術中」と点灯するランプの前で仁王立ちして待っていました。

当時は新しくこの世界に出てくる子供を座って迎えるというのがなんだか失礼に感じたのですが、廊下の真ん中に仁王立ちするおっさんは若干不気味だったかと思います。あと邪魔だったかも。

 

金属製の扉は観音開きするタイプで、密閉されているわけではないので中の声や音がよく聞こえました。「〇〇取って!」とか「うおっ!」とか。一番よく覚えているのは「でかっ!」という声です。そのあと咳き込みながら泣く声が聞こえてきました。

 

あれ?長くなったので次回に続きます。